3日目は雨でした。
朝のジョギングは中止。体育館で体操だけがありました。
この日の最初の講義は、南極で使う物資の調達(購入)や
輸送に関する手続きについて。
あまり知られていないことですが、南極で使う物資は
ほとんど全て南極観測隊員が準備しなくてはいけません。
現地からの情報をもとに、何が必要か考え、それに最適な物を選定し
購入手続きの準備をします。
南極観測で使う物は基本的に税金を使って買うので、公務員と同じように、
めんどくさい購入手続きを経なくてはいけません。
購入した物品は南極へ運ばなくてはいけません。
そのための輸送の手続きも、もちろん隊員の仕事です。
南極はあまりゴミになるものを持ち込んではいけないので、
梱包材の制限があったり、輸送するためのヘリコプターに載せるために
重量や大きさの制限があります。
また、船で国外に持ち出すということなので、輸出の手続きも必要です。
南極で使う精密な機械は輸出制限品になっているものがあるので、
これらも事前に関係機関に届け出を出して、許可してもらう必要があります。
これらの作業について大まかな説明がありました。
続いて、牛尾越冬隊長から南極フィールドワーク概論②の講義です。
(①は冬期総合訓練の時に講義がありました。)
ちなみに、今回も「概論」の講義です。
越冬隊長は「各論は隊員のみなさん個人個人が考えることだから、
講義タイトルは概論のまま続く」と言っていました。
この講義をもとに、自分もフィールドワーク論を作らないといけない
ということですね。
国内ではそろそろ訓練が本格化しますが、越冬隊長からは
「訓練は予行演習ではなく、本番の事前チェックだ」という話がありました。
既に訓練は始まっていますが、これから受ける訓練はそういうことも意識しながら
やりたいと思います。
南極での事故には自然的要因と人間的要因があり、この2つの要因が組み合わさって
大きな事故が発生するので、これらを一緒に想定する必要があります。
訓練に並んで、こういう想定ということも仕事としてやらなくてはいけないようです。
続いては、昭和基地でのゴミ処理について。
昔は昭和基地にゴミを埋めていた時代があったのですが、
現在は基本的に全て持ち帰っているそうです。
今後、昔埋めてしまったゴミについても掘り起こして
日本に持ち帰って処理する方針とのことで、55次隊では
そのための予備調査も行われる予定です。
次は昭和基地での食糧について。
南極らしいと感じたのは非常食の話です。
越冬隊は「しらせ」が帰った後は、次に迎えにくるまで食糧
の補給はありません。そのため、基地で火事があったりして
食糧が燃えてしまっても生きていけるように、非常食が
基地の別の場所に保存してあることです。
(このあたりは、現地に着いたらリポートしたいと思います。)
続いて、観測隊で使う装備について。
特に衣類などの個人装備についての説明です。
さすが南極、装備リストを見ると暖かそうな服がたくさん
用意されています。
一応、これらの防寒服は極地研究所から隊員へ貸出という形に
なるのですが、さすがに1年も使えばボロボロになって、
再利用できないので、実質的には越冬隊員には配布されるようです。
午前中最後は、昭和基地での夏期間中の生活について。
昭和基地は越冬中は30人も人間はいませんが、夏作業中は
100人を超える人が滞在する大きな街になります。
そのために昭和基地には通常使う宿舎に加えて2つの宿舎が備わっています。
これらの宿舎をどう使うのか等、夏期間中の生活についての紹介がありました。
午後は、53次隊の石沢越冬隊長から最新の南極事情について話がありました。
最近完成した「自然エネルギー棟」についての情報や、行きも帰りも
輸送が大変だったという話や、越冬期間中に楽しんだレクリエーションの話などが
ありました。
この後体育館へ移動して、救急救命訓練です。
心臓マッサージ、マウス・ツー・マウス、AEDの使用法、
包帯の巻き方などの基本的な救急救命訓練を受けました。
夕食後は53次隊機械担当だった高澤隊員から、南極における
危険と安全対策について。特に、高澤隊員が経験した失敗事例
について紹介がありました。
各隊員には「事故例集」という、過去の観測隊が経験した事故に
ついて詳細がまとめられた冊子をもらっています。
しかし、やはり紙に書いてあることよりも、実際の経験談の方が
リアルに感じられました。なかなか、日本で南極生活をイメージ
することは難しいので、非常にいい時間となりました。
【続く】夏期総合訓練4日目(6月20日)
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