2013年7月31日水曜日

オゾンゾンデ訓練

昨日までの2日間、つくば市の高層気象台でオゾンゾンデの訓練を受けてきました。


オゾンゾンデ観測では、地上から高度30キロぐらいまでのオゾンの量を測る観測です。
水素やヘリウムのように軽い気体を入れた風船に観測機器をつり下げ、
その機器で測ったデータを地上の観測所に電波で送ります。

オゾンゾンデで大切なのは、Standard Operating Procedure(標準操作手順)と呼ばれる
国際ルールを守って観測を行わないと、せっかく得られたデータが
使えなくなってしまうという点です。
自分で勝手にルールを変えたり、事前点検をサボったりすることは決して許されません。

また、毎日行うラジオゾンデ観測よりも高価な機械をつかうので、
慎重に準備作業をすることが求められます。
ましてや、南極のオゾンゾンデ観測のデータは、オゾンホールの状態を監視するために
世界中に配信されていきます。




訓練の1日目は、通常の観測で行う事前点検の練習でした。
オゾンゾンデの点検器をつかって、使う予定の機器の性能試験を行います。
自分は、去年札幌で同じ観測を経験しているので、細かい手順の再確認でした。
オゾンゾンデは大学院の実習のカリキュラムに入っているぐらいで、
慣れてしまえば、昭和基地でやる観測の中で比較的簡単な部類に入るかと
思っていたのですが、甘かったようです。

いつの間にか、機器に接続している白色のチューブが傷だらけに、、、
(写真ではピンぼけして見にくいかも。)
オゾンゾンデを準備する中でチューブを抜き差しする作業があるのですが、
慣れていないと力加減が非常に難しいのです。
折角なので、南極で同じトラブルが起こった時の対処法も勉強しました。




訓練の2日目は点検に使う装置のメンテナンス方法の勉強です。
点検で使う真空ポンプの油交換とか点検に使う機械の構造などを勉強しました。


オゾンゾンデ観測は作業が多いので、ちょっとでも気を抜くとミスをしてしまうようです。
昭和基地では、2人体制での作業することにして、正確に作業をしているか
チェックできるようにしてミスの無いようにしたいと思います。

2013年7月28日日曜日

南極の今!~つくばに戻った隊員たち語る~

ネットサーフィンをしていたらこんな動画を見つけたので、
このブログで紹介したいと思います。

6月下旬につくば市で開かれた南極の講演会の様子です。
自分もこの講演会があるのは耳にしていましたが、
忙しくて行くことができませんでした。

動画を見る限りの感想ですが、かなり高度な話をしていたようです。


フォークリフト技能講習

今週と先週の土日4日間で、フォークリフトの免許を取得しに
江東区新砂にあるIHI教習所行ってきました。
フォークリフトは出発前の荷造りの時や、昭和基地での
荷物の運搬に役立つという話を聞いたので、取ることにしました。





自動車免許を持っている自分は、学科1日と実技3日の計4日のコースです。
1日目は学科。これに受からないと実技講習にはすすめません。
授業は難しくないですが、睡魔との戦いでした。
授業の最後には試験。教官の方が授業中に話していたことが出題されていました。
(ちなみに、テストは4択式で走行、荷役、力学、法規の4分野からそれぞれ5題、
各分野3問以上正解する必要があります。授業を起きていれば絶対に合格できます。)


2日目からは実技。実技最初の1日目はフォークリフトの走行でした。
フォークリフトは非常に小回りが利くのと、ハンドルを片手で操作しなくてはいけないので、
なかなかコツがつかめませんでした。
走行コースの周りに置いてある三角コーンは何度もフォークリフトに踏みつけられた感じの
痛々しい姿をしていましたが、自分もその悲惨な形状を作るのに加担してしまいました。
フォークリフトは重機系の運転免許では落ちる人が一番多い資格だそうです。
ちなみに、2番目に難しいのが小型移動式クレーン(通称、ユニック)だとか。


3日目は荷物の積み降ろしです。
手順が細々と決まっていて、ハンドルやレバーの操作や安全確認など、色々と覚えるのが大変でした。
この日は日差しが強く、1日が終わった後には日焼けで顔が真っ赤になってしまいました。

この教習所で珍しかったのは、入り口に無料の給茶器があって、
コーヒーとお茶とスポーツドリンクを飲むことができます。
(使えるのは休憩時間中だけですが。)


4日目は実技試験の練習。4回ほど練習した後に試験がありました。
とりあえず、時間内にほとんどミス無しでできたようです。
ちなみに、受講した全員が合格できました。


ちなみに、今回行った教習所のあたりは大手物流会社の倉庫がたくさんありました。
こちらは佐川急便。
こちらは日本郵便。
日曜日だったので閑散としていますが、どちらも巨大な倉庫です。
この場所が日本の物流を支えているのでしょうね。

2013年7月27日土曜日

「しらせ」の国内訓練寄港地が発表

南極観測船「しらせ」は毎年南極に行く前に日本一周訓練に出て、
そこでいくつかの港に寄港します。

先日、今年の訓練で寄港する港が発表されました。

寄港する港では通常船内の一般公開がありますから、
南極に興味がある方は一度訪ねてみてはいかがでしょうか?

現時点でネット上にある一般公開情報をまとめてみました。
・8月31日(土)〜9月1日(日)宮城県石巻港 石巻市建設部河川港湾室
・9月7日(土)〜8日(日)北海道十勝港
・9月14日(土)〜15日(日) 島根県浜田港 自衛隊島根地方協力本部
・詳細不明 沖縄県那覇新港
・詳細不明 高知県高知港

2013年7月16日火曜日

精密日射観測訓練

今週火曜日につくばの高層気象台で精密日射放射観測の訓練を受けてきました。

この観測では精密な「日射や放射の観測」をします。
太陽から地球へ降り注ぐエネルギー、そして地球から宇宙へ跳ね返っていく
エネルギーを測定するものです。

ちなみに、「日射」については「地上気象観測」という項目でも観測が
行われていますが、こちらでは非常に精密な観測を行います。

地球がどのくらいの日射を受けていて、宇宙へどのくらい跳ね返しているのかを
示しているのがこの図です。ちなみに、これはIPCCという、地球温暖化についての
研究結果をまとめたレポートからの引用です。
(15年ほど前の研究結果なので、ちょっと古いかもしれませんが。)
太陽から地球へやってきたエネルギーは雲や地球表面で跳ね返されたり、
地球表面で一旦吸収された後に地球から宇宙へ射出されます。


この観測では、これらの地球表面でのエネルギーの流れを調べます。
具体的には
・直達日射観測
・散乱日射観測
・全天日射観測
・赤外放射観測
・大気混濁度観測
・紫外線観測(この訓練は別の日)
をやっています。


ちなみに、地球温暖化とはこの太陽からのエネルギーを全て宇宙の外へ跳ね返すのではなく、
少しだけ地球の内側に溜め込んでしまう(地球の温度が上がる)現象です。


さて、これらの観測を行う具体的な機器がこちら。
観測原理は、太陽からのエネルギーを熱に変換させて、
その温度を測り、エネルギーに換算します。


この機器をこんな感じで設置します。
黒いボールは太陽からの直射をカットするためのもので、これを使って
散乱日射(空気によって散乱して地上にやってきた日射)の観測を行います。
ちなみに、この機器が置いてある台は太陽を自動的に追跡してくれます。




2013年7月15日月曜日

つくば生活

現在の本来の仕事場所は東京・大手町なのですが、
ここ最近、つくばの高層気象台で訓練を受けています。
この高層気象台は今から100年以上前、小野川村舘野(たての)と
呼ばれていた頃に設立しました。
今でも観測地点名として「つくば」ではなく、「舘野」が使われる時もあります。

ちなみに、この高層気象台は世界で初めてジェット気流を発見したことで知られています。
詳しく書くと長くなるので、またの機会に。



今月は通勤の半分がつくばなので、朝起きた時、
今日は大手町に行く日だったか、つくばへ行く日だったか
なかなか思い出せない日が続いています。
高層気象台へはつくば駅から約4kmほどの道のりがあります。
ちょうどサイクリングロードがあって、そこを歩くと45分ほどかかります。
バスだと本数は多くないですが、10分ほどで近くのバス停まで行けます。
歩くと暑いのですが、信号が無いのでストレス無く歩くことができて、
なかなか気持ちいいです。



つくば生活で一番うれしいのは昼食代が安く済むこと。
この弁当、たったの330円。
普通なら500円ぐらいしてもおかしくないような気がします。



つくば駅でいつも疑問に思うのが、コンビニにある
「パンの街つくば」という張り紙です。
特段、パンと関係がある街でもないのに、何なんでしょう?
何かすごいパンでもあるのでしょうか?


また、つくば関係で面白い情報を見つけたら書きたいと思います。

2013年7月14日日曜日

つくばエキスポセンター

つくば駅にこんなポスターが掲示してありました。


詳しくは、つくばエキスポセンターのホームページに載っています。


今度出発する55次南極観測隊には、つくば市在住者が5人ぐらい
在籍していますから、こういう企画が生まれたのでしょうか。

2013年7月11日木曜日

ドブソン分光光度計訓練

今週、水曜日と木曜日につくばの高層気象台でドブソン分光光度計の
訓練を受けてきました。

既に、この測器のために何度も高層気象台に来ていますが、
今まではメンテナンスのための出張でした。
今回は、訓練のための出張です。

といっても、この測器を使って約1年間札幌で観測してきたので、
基本的なことや今まで曖昧に理解していたことを復習し、
さらに今回南極でやらなくてはいけない仕事をマスターするのが
今回の目的でした。

まずは座学。ドブソン分光光度計の観測原理を勉強します。
三角比や対数を使って数式を導出しなくてはいけないので、
自分の鈍っている脳みそを叩き起こすのが大変です。
それにしても、よくこの測器を考案したドブソンはこんな複雑な数式で
観測をしようと思ったな。。。とつくづく思います。

数式の解説が終わったら実際に測器の中身を見てみます。
自分は担当なので何回も見ていますが、それ以外の隊員はほとんど見ていないので、
実際の部品を見ながら理解を深めます。

そして、実際の観測の練習も。
観測自体はほとんどの部分が自動化されているので、慣れてしまえば簡単な作業です。


大変なのは、観測データの品質管理。
基本的にコンピュータが観測データを処理してくれますが、
どこまでそれを信じ、どこから人の手によって修正するのかを見極めるのが
とても難しいのです。
こればっかりは、たくさんの観測結果を見る経験をしないと身に付かないようです。


2日目は担当だけでの訓練。
主に部品の付け外しの練習をしました。
これまで3、4回ぐらい、この練習をしてきましたが、
とても難しくてまだきちんと身に付いた気がしません。
もう何回か練習してマスターしないといけないです。

最後に、測器を乗せる台の組み立て。
これは誰でもできるものだったので、練習というより
ちゃんと南極で使える状況かどうかのチェックでした。


これで終わりかと思いきや、まだ一つ大事な訓練が残ってしまいました。
(9月ぐらいに実施される予定です。)

2013年7月9日火曜日

ブリューワー分光光度計訓練

月曜日、火曜日とつくばの高層気象台で、ブリューワー分光光度計の
訓練を受けてきました。
ちなみに、ブリューワーとはこの測定器を発案した人の名前です。
この測定器ではオゾンと紫外線の観測をすることができます。
しかも、プログラムによって自動観測してくれるので、うまく動いてくれると
ほとんど何もせずに観測データを得ることができます。

ただし、非常に精密な機械なので、少しのホコリや振動などで
機械の調子が悪くなることもあり、担当者(今回は自分です、、、)は
決して気を抜けない怖さもあります。

通常は、こんな感じで太陽の光を観測します。

調子が悪い時には、機械の蓋を開けてメンテナンスをします。
南極にいる間に、こんなことが無ければいいのですが。。。


ここは、この測器の最も重要な場所。
ちなみに、上の写真では、カバーがかかって写っていません。

青色に光っている部分は回折格子といって、太陽光から観測する
紫外線を選別するものです。
触ることはもちろん、少しでも息を吹きかけるのもNGです。

訓練では毎日の点検の他、定期点検や部品の交換方法等を勉強しました。


2013年7月6日土曜日

他国のミッドウィンター

先月、6月21日は日本では昼が一番長い夏至でしたが、
南半球では季節が逆になるので、冬至になります。
特に極域にある南極は一日中夜が続く「極夜」が続きます。

この冬至の日の前後数日にはどこの国の基地でもミッドウィンター祭という
お祭が開催されます。
例えていうなら、南極の正月みたいなものだと考えてもらえばいいかと思います。

毎年、各国の基地どうしで、お祝いのメッセージを交換する風習があります。
昔は無線で交信していたようですが、最近はインターネットの発達で
カラフルなグリーティングカードが交換されるようです。

極地研の玄関には、各国の南極基地から送られた
グリーティングカードなどが掲示してありました。
いくつか、面白かったのを紹介します。


まずは日本隊。いわゆるPiKAPiKAってやつですね。

日本国内からは文部科学大臣からのメッセージ。
もちろん、極地研究所所長からもメッセージが。


一番はしゃいでいるのはフランスの基地。
ちょっとセンスあるドイツの基地。
みんな丸刈りなのが印象的な中国の基地。

なんとアメリカのオバマ大統領からのメッセージもありました!
アメリカの南極観測に対する熱意を感じます。
日本ももっと、世界に熱い気持ちをアピールしてもいいように思います。




後でネットで調べてみたら、各国のグリーティングカードがこのページに載っていました。
Happy Mid-Winter!
More Midwinter Greetings
。。。日本が入っていない!
どういうことなんでしょうか?

2013年7月5日金曜日

隊員室開き

大気微量成分連続観測訓練の夜には、55次隊の隊員室開きが行われました。

先月の南極地域観測統合推進本部総会でほとんどの55次隊の隊員が正式に決定しました。
そして、今月1日から極地研究所の一室に55次隊員室が開設され、
多くの隊員はここで物資の調達や訓練をしています。
入り口に55次隊のロゴが貼ってあります。
ちなみに、55次隊のロゴは先月の夏期総合訓練でこれに決定しました。


この日は、無事に開設された隊員室で仕事をする55次隊員が中心となって、
これからお世話になる方々への顔見せ会が開かれました。
調理担当や庶務担当が中心となって、宴会の準備から当日の運営までを
行いました。


隊員室開きの準備中。肉を焼いています。この肉は大繁盛でした。

ちなみに、これが隊員が頑張って作るメニュー。
いちいち、メニューの前振りがあって、どこかの球場近くの居酒屋メニューみたいです。

この日はテレビの取材も入っていました。いつ放送されるのかは、よくわかりませんが。

小規模なものかと想像していましたが、なんと総勢100人以上の方々に参加して頂きました。

最初に宮岡隊長から挨拶。
会の中盤には隊員紹介。ここに立っているのは越冬隊のメンバー。
右側の台に上がっているのは牛尾越冬隊長です。


盛大に会が終了したのはいいものの、あまりにも食事を用意し過ぎたため、
かなり余ってしまいました。かなりの部分は参加者にお土産として持って帰って頂きましたが、
それでも残ってしまったものは、冷凍したりして翌週からの隊員の昼食になったことでしょう。

大気微量成分連続観測訓練

7月5日に極地研究所で大気微量成分連続観測訓練を受けてきました。

この観測は、本来は気象担当ではなくモニタリング担当が行う仕事なのですが、
自分が参加する55次隊ではその担当隊員が削減されてしまったので、
気象担当が代わりに行うことになった観測です。

大気微量成分観測とは、その名の通り大気中の微量な成分を調査するものです。
大気(空気)は基本的に窒素と酸素でできています。
引用元
この観測では、窒素以外の成分を測ります。
具体的には、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、酸素です。

これらの気体は地球温暖化などの気候変動を監視する上で
非常に重要な気体なので、昭和基地で毎日観測を行っています。


測定器を見せてもらったので、少し紹介します。
この日は概論的な話が中心で、実際にこれらを使った実習は
10月の予定なので、その時にまた詳しく説明したいと思います。

二酸化炭素の測定装置。

メタンの測定装置。

酸素測定装置。
この測定装置は気温の変化に弱いそうで、ビニール製の温室に大切に保管されています。


標準ガス。
この観測ではたくさんのガスボンベを使います。
気体の濃度を観測したいなら、単純に空気をポンプで吸引して、
測定器で測ればいいと考えてしまうかもしれませんが、
これらの測定器には「物差し」となるものがありません。

そこで、既に濃度が分かっている気体を使ってあらかじめ、
「物差し」を用意しておき、目的の気体の濃度を測定します。
その「既に濃度が分かっている気体」が標準ガスと呼ばれるこれらの
ボンベなのです。

ちなみに、この標準ガス、濃度が正しいかを調べてもらうために
わざわざアメリカまで持っていくものもあるんだとか。。。



本題とはズレますが、
測定器が置いてある部屋には、なんだか化学実験の実験器具のようなものがあって、
ひとり興奮してしまいました!
大学時代は理系にも関わらずこういう場所で格好良く研究をしたことが無いので、
ちょっと憧れます。(たぶん南極でも、その格好いい部分は担当しないのでしょうが。)